北海道はでっかいどー

オオイチ.JPG

 先日、ブログのお休み宣言をしたばかりだけど、その舌の根も乾かぬうちに更新することになった。なんと節操のないことか!けれど、宣言の後、たくさんの励ましの言葉をいただいて、回想録というヒントまで出してもらい、なるほどその方向なら更新も可能かと考えた次第。この変節漢をお許しいただきたい。
 そして、書いてはみたものの、やはりあいまいな記憶を呼び起こしながらの作業はやはり大変で、とりとめのないぶつ切り状態になってしまった。やはり、行ってすぐ書く採集記の方が、書きやすいしわかりやすいようだ。と、まあ、こんな言い訳しなければならないほどつたない文章ではあるが、お許し願いたい。


 
 初めて北海道に行ったのはいつだったっけ?
 北海道へは、蝶採りだけでなく、スキーでもゴルフでも行ったことがある。けれど、学生時代には北海道までスキーに行く金はなかったと思うし、ゴルフは30過ぎてから始めたので(今はもう引退)それより前に行ったことがあるはず。それなら、初めての北海道は蝶採りに間違いない。さて、どこに行ったんだろう?

 まず、覚えているのはオオイチモンジを狙った丸瀬布だ。たぶん、これが最初だった気がする。まだ、蝶採りを始めて間もないころだったので、K目の案内でくっついて行ったはずだ。と言っても、やつは車の運転ができないので、現地でのレンタカーでの移動は、私が運転した。しかし、どこの空港を使ったのだろう?今、考えると旭川から行くのが近そうに感じるが、女満別から行った気がする。東部から中央部へ移動したのだ。
 そして、このとき、オオイチと言えば丸瀬布というくらい有名多産地と聞いていたにもかかわらず、一つ目撃しただけだったのを覚えている。けれど、なにしろ初めての北海道だから、いろいろな蝶を喜んで採っていた。エゾシロチョウ、カバイロシジミ、カラフトタカネキマダラセセリなど、本州にはいないか少ないものが何種類も採れた。
 そして、このときカラフトヒョウモンも採っているのだが、時期が遅かったからだろう、みなボロだった。その後の北海道遠征でもカラフトヒョウモンは何度かネットしたが、どれもみなボロだった。カラフトヒョウモンは発生時期が早いので、オオイチ中心で考えると、どうしても発生後期に行くことになってしまうからだ。けれど、いつのころからか、この蝶を見かけないようになり、気づいたらほとんどいなくなって、珍蝶になってしまった。最近になって、きれいな標本がほしくなったのだが、探しても探しても、ちっとも見つからない。30年前はボロばかりとはいえたくさんいたのに、なんでいなくなったのだろう?本州のように開発が進んだためとは思えない。多少は影響があるかもしれないが、まだまだ手付かずの自然が残っている北海道なのに、不思議なことだ。
 そして、このとき一番驚いたのはコヒオドシの多さだった。初めは喜んで採っていたものの、あまりの多さにすぐに飽きてしまった。本州では高山蝶として扱われ、簡単には採れない蝶だが、北海道では普通種なのだ。本州で高山蝶と言われている蝶はタカネヒカゲ、ミヤマモンキチョウ、タカネキマダラセセリ、クモマベニヒカゲ、ベニヒカゲ、オオイチモンジ、クモマツマキチョウ、コヒオドシの8種があげられる。場合によっては、ミヤマシロチョウや、ヤリガタケシジミも入れる人もいる。けれど、この中で純粋に高山蝶と言えるのは初めの4種だけだそうだ。あとの蝶は比較的低いところでも生存しているからというものだが、北海道に来ると、なるほどと思ってしまう。ベニヒカゲなんか、標高0mに近い海辺にもいるのだから。コヒオドシはそこまで低いところで見たことはないが、それでも、ちょっと小高い丘程度のところにいくらでもいる。なるほど高山蝶には入れてもらえないかもしれない。
 さて、その狙いだったオオイチモンジを初めて採ったのは層雲峡だった。層雲峡と言えば北海道のほぼ中央で、黒オオイチと呼ばれる黒化個体がよく採れることで有名だ。実はオオイチにはその前にも何度かチャレンジしている。けれど、ことごとくヌルを食らっていて、さすがオオイチ、採りやすいはずの北海道でも難物だぞ、と思っていた。
 層雲峡にはこのとき以前にも来たことがあったが、ポイントも知らずに適当な林道に入って、見事にカラぶっている。まあ、ベニやクモベニなどは採れたし、オオイチは採れたらラッキー程度のスタンスだったので、満足はしていた。
 だが、そのときはメインターゲットがオオイチで、ポイントもしっかり把握して臨んでいた。層雲峡に宿を取り、朝、7時前という私としては信じられないくらい早さで宿を出てポイントに向かった。早くしないとよいポイントには人が入ってしまうと聞いていたからだ。けれど、そんなに早く出たつもりであったのに、それではもう遅かったのだ。よいと聞いていた場所を避けて、比較的すいてそうな場所を選んだにも関わらず、そこにはもう人が陣取っていた。
 仕方なく、そこから奥へと歩いて行ったのだが、これが当たりだった。その道沿いはポイントとは言われてなかったのだが、まるで蝶道のように次々とオオイチが飛んできたのだ。実際、蝶道になっていたのだろう。最初の1頭はさすがに興奮したが、3つ4つ採れたら余裕が出てきて、あー、また来た、ホイ、という感じで数を重ねた。ほんの30分ほどで10くらい採れたので、もう切り上げて別のものを探しに行くことにした。クロオオイチは採れなかったが、そう簡単に採れるものではないだろうし、初めて採れたのがうれしかったので、もう十分だと思ったのだ。
 このときはオスしか採れなかったが、その後、八剣山や富良野でメスも採れた。メスは飛ぶ時期が短いので、採るのはいい時期に当たるしかなく、かなり運が必要なようだ。

 北海道の南東部をずっと走ったこともある。千歳から襟裳岬へと行ったときだ。実はこのときは蝶がメインターゲットではなかった。K目がオサムシを採りたいというので、それに付き合ったのだ。そのあたりには、珍しい色のオサムシがいるそうだ。
 千歳から苫小牧方面に向かい、そこから襟裳岬方向へと車を勧めた。ところが、そこからが長かった。走っても走っても、ずっと海岸線。本当に目的地に到達できるのだろうかと不安を感じるほどだ。
 そこで思い出したのが、江戸時代の探検家、最上徳内だ。江戸時代に地図や測量で有名なのは伊能忠敬や間宮林蔵だが、私はそれより最上徳内の方を尊敬している。北海道調査の初期に人夫として同行した武士でもない男だが、根室まで人夫として同行し、そこで役人たちは引き返したのに、徳内はそこから国後に渡り調査を続けた。その功績から武士の位どころかかなりの出世を果たしている。その後も何度も北海道調査をして、中には幕府の指示を待たずに動いたため、投獄されたこともある。そして、隠れた一番の功績は、当時、超機密文書であった北海道の地図をシーボルトに託したことである。もちろん、発覚すれば死罪だ。だが、このおかげで、幕末のロシアとの領土交渉で日本は有利な立場をとることができた。世界で認められた地図が、ロシアの主張より早い段階で日本が作っていたと認められたからだ。そのまま機密として海外の目に触れなければ、北方領土や樺太はもちろん、下手すると北海道もロシアのものになっていたかもしれない。
 その最上徳内が歩いたであろう道を、車で走っていたのだ。もちろん当時は道なんてなかっただろう。車でさえ何時間もかかるところを、徳内は徒歩で何度も往復していたのだ。そんな感慨に浸りながら、ひたすら車を走らせた。
 そのときは、K目のオサムシ採りにつきあったもので、蝶はゼフを採ったくらいだった。オサの方は、面白ければ続けてもいいなと思っていたが、コップを埋めるための穴掘りが大変なので、嫌になってしまった。頑張って50個ほど穴を掘ったが、手のひらが痛くなってそれ以上はきつかった。その後の運転では、手のひらが筋肉痛になって、ハンドルを握るのが辛くなったほどだ。オサをやる人は1日に何百ものコップを埋めると言う。50くらいで筋肉痛になるようでは、何百も埋めたら手が腐ってしまいそうだ。オサムシもきれいで集めたら楽しいだろうが、この辛い作業に耐えられなくて、深入りするのはやめておくことにした。
 ちなみに、襟裳岬の近くにはアポイ岳というヒメチャマダラセセリで有名な山がある。その時は時期ではなかったので寄らなかったが、いずれ観察しに行ってみたいところだ。

 東部に行ったこともある。釧路から根室、春別から阿寒湖方面を経由して帯広へと1日で移動したことがある。前半は助手席だったが、後半は私が運転した。探し回って、結局狙いのイシダシジミは見つからなかったが、とにかく走り回っていた気がする。
 そして、北部へも去年行った。ベニヒカゲ三昧だったが、このときもかなりの距離を移動した。それ以前に、ヒメギフ狙いで旭川から名寄、さらにそこから1時間以上北上して敏音知まで行ったが、宗谷から南下してその近くまで行ったときは、これでもまだ、敏音知まで届いてないのかと唖然としたものだ。もし、旭川から宗谷まで行ったら何時間かかるのだろう?

 もちろん、西部の札幌の近くは何度も行った。オオゴマを求めて、月形までは何度も往復したし、小樽にも何回も行った。
 小樽市のはずれ、銭函というところにカシワ林があり、キタアカシジミやダイセンシジミなど各種のゼフがたくさんいる。ある年、友人たちとここを訪れた時はすごい光景を見た。昼過ぎに着いて、いつものように長竿で叩きながら探していたのだが、キタアカシジミはときどき飛び出すという程度で、特にたくさんいるとは感じてなかった。そして、その日はとても暑くて、自分一人であればさっさと宿に引き上げていただろうが、この時は友人が一緒だったので、しかたなく付き合っていた。ところが3時を過ぎたころだったろうか、キタアカのテリタイムが始まったのだ。これはもうすごかった。今までどこにいたのか、無数のキタアカが舞い始めたのだ。形を変えながら動く龍のように、おびただしい数がわんわん飛ぶようになった。群れは木の上を飛ぶのでなかなか長竿でもなかなか届かないのだが、ここのカシワ林は海辺のためか、あまり樹高は高くないし、場所によっては長竿が届くところもある。私は見ただけで食傷気味になっていたし、そもそも数を採りたいとは思ってないので、ただ眺めていただけだが、友人たちは喜んで採っていた。群れのあたりでネットを振り回し、1度に何頭採れるかを競ったりしていた。後で数えたらネットの中には100以上いたそうだ。

 札幌と旭川を往復したときもあった。そのときはまだ高速が開通してなかったので、ひたすら下道を走ったものだ。途中、比布という町を通過し、ピップエレキバンというのは、この地名から取ったと初めて知ったのはこの時だ。ここで作っているらしい。
 旭川へも何度も行っている。前記のヒメギフ採りで名寄方面に行ったり、層雲峡へ行ったり、富良野に行ったり、どこへ行くにも起点になった。

 考えてみれば、北海道もあちこちへ行ったものだ。けれど、まだ函館方面だけは行ったことが無い。あれだけ走り回ったのに、まだ渡島半島には踏み込んでいないのだ。そして、北海道の島にもまだ行ったことが無い。利尻には1700mを超える山があるし、礼文にはレブンアツモリというきれいなランがある。焼尻はゼフが面白いらしい。いずれは行ってみたいと思いながら、アプローチの不便さと船酔いの怖さから、未だ行ったことがない。
 やはり、北海道は広い。これだけ通っていながら、まだまだ行ってないところがたくさんあるのだ。これからもたぶん毎年どこかへ行くだろう。そして、いつになってもあの広大な大地に感動し続けることだろう。
 そして叫ぶのだ。北海道はでっかいどー!と。

カラスシジミミ.JPG
カラスシジミ:場所によってはウジャウジャいる

ゴマ.jpg
ゴマシジミ:広範囲に分布している

黒ベニ.jpg
ベニヒカゲ:変異が多いが、真っ黒いこのタイプは場所が限定される

コヒオドシ.jpg
コヒオドシ:もはや普通種

ヒメシジミ.jpg
ヒメシジミ:新鮮なものは縁取りの白がきれい

メナシウラジャ.jpg
ウラジャノメ:黒紋の中に白い点がない、いわゆるメナシウラジャ

フタスジ.jpg
フタスジチョウ:白帯が広くてきれい。

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この記事へのコメント

CHOUYA777
2020年04月26日 11:25
北海道の採集記ありがとうございます。とても楽しめました。
私は2019年北海道に3回行きました。
6月上旬は層雲峡周辺でリンゴシジミ、カラフトヒョウモン狙いでした。
リンゴシジミは採れましたがカラフトヒョウモンは採れませんでした。
最近はカラフトはシオシオさんがおっしゃるように少ないようです。
7月上旬は札幌市でオオムラサキを採り各種ゼフが最盛期でした。
キタアカシジミはなぜか近年激減しておりやっと1頭採れたのみでした。
何でこんなにキタアカ減ったのか不思議です。
また日高の方に行きツマジロウラジャノメを1頭採りました。ツマジロウラジャノメは本州産とは斑紋が異なり数も少なく貴重な感じです。
オオイチモンジは札幌、日高ともに少なかったです。2018年に行った時はすごくオオイチ多かったですが・・・。
7月下旬はエゾヒメシロチョウが多く、札幌市でもキマダラモドキが採れました。キマダラモドキは以前は渡島半島、北海道南部にしかみられませんでしたが最近は札幌市に生息範囲を広げています。
私はまだ北海道のオオゴマシジミは採っていません。本州産とはブルーの色合いが異なり綺麗だそうです。今後の目標です。
以上思いつくままに勝手に記しました。
今後も楽しみにしています。よろしくお願いいたします。
シオシオ
2020年04月26日 12:13
CHOUYA777 様

 さっそくのコメントありがとうございます。北海道楽しんでいらっしゃるようですね。私の浅薄な話は、物足りなかったのではないでしょうか。
 カラフトヒョウモンは本当にいなくなりました。あれだけたくさんいたものが実に不思議です。ホソバの方が少なかったのに、今はホソバばかりです、そして、そのホソバも数が減ってきている気がします。
 ツマジロはもとから難物でしたね。私は2回挑戦して、それぞれ1つずつでした。でも、うまいことに1ペアになりました。
 オオゴマは渡島産のものはまだ採っていませんが、北限個体を去年やっとの思いで1つ採ることができました。こちらも聞いていた話だと、そこそこ採れるとのことでしたが、私は全然見つけられませんでした。やはり数が減っているのかもしれません。
 北海道産キマモはまだ採ったことがありません。苫小牧の方のポイントを教えてもらって、場所はわかるのですが、つい、後回しになってまだ行ってません。うらやましいです。
 北海道は魅力あふれるところです。これからも何度も行きたいと思います。
CHOUYA777
2020年04月26日 12:48
ありがとうございます。
オオゴマシジミ採られたのは貴重ですね。うらやましいです。
すみません私さきほどキマダラモドキを札幌市で採ったと記しましたが
千歳市の間違いでした。訂正させていただきます。
今後もよろしくお願いいたします。
シオシオ
2020年04月26日 12:58
CHOUYA777 様

わざわざ、ごていねいにありがとうございます。オオゴマは聞いていた場所では、食草のヒキオコシがほとんどありませんでした。いずれにしても川沿いの場所なので、台風の大雨で流されたのかもしれません。私が採った場所は別の沢でそこで会った地元の人も、そこに生息しているとは知らなかったと言ってました。でも、そこにはヒキオコシがたくさんあったので、今後増えることを願っています。