11月15日~22日 石垣 与那国

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 前回の採集から1か月以上、間が開いてしまった。まあ、秋になって採るものが限られてくるのだからしょうがない。冬になれば本土なら5か月は採集に出られないのだから、1か月くらいの中断はどうってことないはずだ。けれど、なぜだろう?これだけ間が開くとうずうずが止まらなくなる。まだ、今年の採集は終わってないぞ、という気持ちのまま、じっと待っていたからだろう。けれど、そのうずうずもやっと治まった。出発日になったからだ。今年1年、八重山はあまりよくなかった。個体数も少なく、迷蝶もあまり飛んでこなかった。それでもこの時期に採集予定を入れたのは、発生迷蝶を期待しているからだ。当たり前のことだが、飛んできた迷蝶がすべて発見されるわけではない。というか、飛んできたもののうちほんの一部だけが目撃されているだけだ。残りの大多数は誰の目にもとまらずに終わる。中には運よく食草を発見して発生する場合もある。最近の例でもルリマダラがいきなりたくさん採れたことがある。ウスアオオナガウラナミシジミなどは毎年のように秋になると発生個体が見られるようになる。さて、今年最後の締めくくりに、何かいいものが採れるだろうか?  

 11月15日

 いつものパターンでY口さんと羽田で落ち合い、ラウンジで昼食。蝶談義をしながら時間をつぶし、2時過ぎの直行便で石垣へ。
 空港でレンタカーを受け取り、宿へと直行する。そして、岩へと向かう。そこにはすでにA木さんが来ていた。しばらくするとS谷さんもやってきた。さっそく情報交換になる。ひと月ほど前にコウトウマダラが複数採れたそうだが、最近は何も採れてないと言う。それでもマルバネルリマダラは発生がつづいているようだし、マダラ類は寿命が長いから、ほかの迷マダラが残っている可能性はある。
 明日からの採集に期待を膨らませて、9時前におひらき。

 16日

 最近のパターンだと、最初に向かうのは市民の森なのだが、今回は最初に屋良部に行ってみることにした。特に目的や情報があったわけではないが、木の花が咲いていれば蝶がよく集まるところだ。
 しかし、途中のカラスザンショウはすでに花が終わり、蝶はほとんど来ていない。作業道まで来てみるとすでに先客がいたので、さらに進んで三差路のポイントで探索する。しかし、蝶の数は少ない。しばらくするとさっき作業道にいた先客が車で通り過ぎて行った。それなら代わりに我々がそこに行ってみるか。
 作業道を歩き始めてしばらくすると、なぜかハエがブンブン飛んでいた。こういうときは近くに何かの死骸があることが多いのだが、と思っていると足元に大きなヘビの死骸を発見!まだ死んでから時間がたってないようで、腐臭もほとんどなく、形も保たれている。そしてよく見ると、これハブじゃないか。正確にはサキシマハブ。八重山に通い始めて40年。初めて見たハブは死骸だった。

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 さらに奥へ進んでいくと、頭上の木にマダラが集まっているところを発見。カラスザンショウは終わっているので別の木だが、種類はわからない。とにかく持ってきた5m竿を伸ばしてみる。なんとか一番手前の枝には届く。そこにもときどき蝶が飛んでくるが、枝が入り組んでいるので竿を振りにくい。飛んでいるものの中には少し大きめで、マルバネルリマダラと思えるものや、前翅のはしが白っぽくみえるもの、もしやガランピマダラ?というものもいたのだが、どうしても採ることができない。10分ほど格闘してやっと一つだけネットに入れることができたが、入っていたのはツマムラサキマダラだった。せめて7mを持ってきていれば、もう少し楽に採れるかもしれないのに、それは宿においてきてしまった。翌日、もう一度出直そうということになり、先へ進む。
 奥へ進んでみたものの、草原にはセンダングサが少なく、今回はあまりよいポイントとなりそうにない。だが、別の草原の奥の方にツマベニチョウが複数舞っているのを見つけた。草原にツマベニというのは変な感じだが、今まで踏み込んだことのない場所なのでちょっと見てみることにした。草丈は低いし踏み跡もあるので、そこを進んでいくと、そこにはギョボクが何本か生えていた。ツマベニはこのギョボクに集まってきていたのだろう。さらに奥を見ると、山のふもとにいくつか蝶の姿が見えるそちらへの踏み跡はなかったが、草丈は低いので踏み入ってみる。と、そこには比較的マダラが集まっている。ヒメアサギマダラやツマムラサキマダラがほとんどだが、ほかのマダラもいるかもしれないと思って、しばらく探索する。と、中にとても鮮やかなツマムラを発見した。もしかしたらフィリピン型かもしれない、と思って追いかけたのだが、どこかへ飛び去ってしまった。今まで来たことのない場所だったが、意外とよいポイントなのかもしれない。
 作業道を引き返す。途中、もう一度木の上のマダラを狙ってみるが、やはり無理だ。諦めて場所変えすることにする。
 大高に向かう。しかし、ここもたいしたことはない。さらに山原橋へ。ここは最近状態がよくないのだが、今回はセンダングサがだいぶ復活していた。とはいえ、蝶は少ない。
 この後、どうするか?平野には行ってみたい。けれど、もうすぐ昼になるし、のんびり昼飯を食っていたらあそこまで行く時間がなくなってしまう。そこで、近くで昼飯を調達できたら平野へ向かい、なければ高田植物園に向かうことにする。米原のあたりでみつけた雑貨店でパンを売ってないか聞いたが、扱っていなかった。けれど、山原橋のあたりに手作りパンの店があると教えてくれた。引き返してそこへ行く。わかりにくい場所で店の入り口もわかりにくかったが、中にはなるほどいろいろなパンが並んでいた。どのパンもでかい。巨大なカレーパンを一つ購入する。ずっしりと重く、これ一つで昼飯には十分だ。それにしても、こんなわかりにくい場所で商売になるのだろうか?
 とにかく昼飯を調達できたので、車内で食べながら平野を目指す。
 平野に着くと、なんとかシロオビアゲハは飛んでいる。ここはシロオビの多いところで、赤の発達した個体も採れているので、毎回探しに来る。今回もそれを求めて探し回ったのだが、2型、いわゆるベニモン型と呼ばれるタイプはほとんどいない。1型でも変異は出るようだが、赤の発達するタイプは2型に多い。なんとか1つ2型をみつけたものの、ボロボロの個体だった。多少赤が発達していたが、こんなにボロではしかたない。リリース。
 その後第二のポイントにも移動し探し回ったが、あまり成果は得られなかった。確保したのはウラギンシジミの低温期型とシロウラナミシジミの小さなメス、そしてオジロシジミくらい。

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 その後、真栄里に向かう。前回はシロウラナミがたくさんいたが、今回はほんの少しになってしまった。ウコンの花の時期が終わったからだろう。ついでに近くでテツイロビロードセセリが発生していると聞きつけて、食草のデリスがあると言われる場所を探したが、見つけられなかった。
 もう、3時を過ぎたのであきらめて宿に戻ることにした。今日はサッカーのベネズェラ戦があるので、マックスバリューで夕食を買い込み、宿に戻る。
 サッカーは先制したものの、終了間際にPKを与えてしまい、引き分け。うーん、残念。

 17日

 朝起きると雨が降っていた。これでは早めに出てもどうしようもない。それでも、前の日会わなかったS谷さん、そして前の日の夜にやってきたK目が共に屋良部へ行くと言っていたので、10時前に宿を出た。
 屋良部に行くと、ちょうどK目に出会った。やつも来たところだと言う。ちょっと情報交換したところで作業道へと向かう。相変わらず曇りで太陽は見えないが、昨日見た木にはやはりマダラが来ていた。今度は7m竿を持ってきたので、今日こそはと頑張ったのだが、距離的には届いているものの、枝がじゃまで思うように振ることができない。なんとか2つほどネットに入れることができたが、どちらもツマムラだった。
 奥へ進んで、昨日きれいなツマムラを見たところへ行ってみたが、天気が悪いせいかマダラの姿は少ししかなかった。やはり天気が悪いと飛びが悪い。諦めて場所を変えることにした。
 K目は平野へ向かうと言う。我々は昨日行ったし、天気が悪いので近場を回ることにする。S谷さんとは出会えなかったが、移動している途中でラインがきた。バンナから植物園に向かうと言う。我々も昼は植物園に行くことにしていたが、まだちょっと早いので市民の森に向かうことにする。
 市民の森には先客がいたが、ポイントは広いので我々も探索することにした。が、そこはかなり草刈りされていて、マダラが少ない。一回りしたが、ろくなものがいなかった。
 植物園に着くと、S谷さんもちょうど来たところだった。M千円さんも交えて蝶義をしつつ昼飯。
 さて、午後の部を始めようと外に出たら雨が降ってきた。S谷さんは屋良部へ向かうと言う。我々は大里へと向かうことにした。雨はすぐにやんだが、空はドン曇りで、いつまた降ってくるかわからない。
 大里について探索を開始したものの、蝶はほとんど見られない。天気のせいもあるだろうが、もとより数が少ないのだろう。しばらくして諦め、宿に戻ることにした。
 宿に向かって走っていると、また雨が降ってきた。そしてそれはどんどんひどくなり、スコールというよりゲリラ豪雨のようになってしまった。街中の道はまるで川のようになり、学校の校庭は池のようになっていた。なんとか宿についたものの、屋根のない駐車場からフロント入り口までの10mでびしょ濡れになりそうだ。しばらく逡巡していたが、なんとかおさまってきたところで、車を飛び出し、さほど濡れずにすんだ。
 夜はS谷さんと食事の約束をしていたが、ひどくはないもののまだかなりの雨が降っていたため、車で出かける。幸い、食事場所の駐車場は空いていた。そこでまた蝶談義をしながら夕食。そういえばバイクで平野へ向かったK目はどうなったのだろう?

 18日

 8時半に宿をチェックアウトして空港へ向かう。今日は与那国に渡るのだ。
 空港で与那国ホンダの車に乗り、バイクを借りて宿にチェックインする。そして、したくをしてすぐに飛び出す。
 まずはいつも通り新川線を流す。と思ったら、全部草刈りされていた。それでも、ふつうならフラフラ飛び出す蝶が多少はいるものだが、今回は全くいない。一応、スピードは控えめにあたりを見回しながら進むのだが、ここまで何も見ないとがっかりする。何もしないまま、宇良部までやってきた。
 宇良部はさすがに花が残っていた。むしろいい感じの花場になっている。しかし、蝶は少ない。草刈りされた新川線はしょうがないが、花がある宇良部になんで蝶がいないのだろう。アサギマダラがときどき現れるが、それ以外の蝶はほとんどいない。たまにセセリが飛ぶが、いくつか見たのはすべてクロボシセセリだ。漁業無線のところにバイクを停め、一応歩いてみる。鞍部を通り、さらに上っていくが、全然蝶がいない。
 しかたない。他も見てみよう。
 再び何もいない新川線を通り、途中、イランダ林道にも寄ってみたが、ここも草刈り!比川林道へ行くと、ここも草刈り!さらに久部良岳へ向かう。上り坂にさしかかると、いつもに増してコケがすごい。これはツルツル滑るので危ない。そして、なんということか、この道もまた草刈りされている。それでも頂上に期待して滑りそうな道を進む。そして、頂上に着いたが、奥の一部を除いてすべて草刈りされていた。蝶はメスアカムラサキ(♂)が1つだけ飛んでいた。まだ何も採ってないのでこのくらい確保するかとネットしてみたがカケていた。リリースする。

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 そして、またオッカナイ道を降りて、三石方面に進む。ここはまだ花が残っている。だが、蝶が少ないことは変わりない。すると、そこにY口さんがいた。何もいませんねえ、と互いに苦笑い。さらにナーマ浜へと向かうことにする。
 途中の道に前回クズがたくさん咲いていたところがあった。このクズでウスアオオナガウラナミシジミや、もしかしたらムラサキオナガウラナミシジミが発生しているかもしれない。と思ったら、なんということか。ここも草刈りされていて、クズは影も形もない。
 そのままナーマ浜に行く。ここは前回草刈りされて何もいなかったが、少しセンダングサが復活していた。モンバの木にもスジグロカバマダラがいくつかまとわりついていた。よく見ると、まわりにもスジカバやタテハモドキが2つ3つ飛んでいる。ここが一番蝶の多いところではないか?
 それでも、あまり採るべきものはない。そこから比川へ行ってみる。前回ハマヤマトシジミがいたところをもう一度のぞいてみる。が、そこも草刈りされていた。ここは道路ではないので、畑の持ち主が除草したのだろう。
 あと見てないのはアギンダくらいか。そちらへ向かう。ここも道沿いは草刈りされていたが、奥は花が咲いていた。けれど、花があっても蝶がいないのには変わりなかった。しかもだんだん曇ってきた。これではますます飛ばなくなる。
 もう一度宇良部へ向かうことにする。漁業無線にバイクを停め、スマホを見ると、Y口さんからラインが来ていた。なんと、人面岩でコモンタイマイを採っただと。完全にやる気をなくして、もう帰りたくなっていたところだったが、これで少しモチベーションがあがった。一昨年あたりからコモンタイマイは与那国で採れたり目撃されたりしているが、この夏は誰も見ていなかった。先月、久しぶりに目撃されたそうだが、細々と生き残っていたのだろう。とはいえ、ごく少数が発生しているだけなので、そう簡単に見つかるものではないだろう。偶然の出会いに期待するしかないが、それでも可能性があるということは、ここにいる理由ができたということだ。
 今日はそれまでに、カラスアゲハ、アオスジアゲハ、アサギマダラ、ヒメアサギマダラ、スジグロカバマダラ、リュウキュウアサギマダラ、タイワンシロチョウ、ツマベニチョウ、クロテンシロチョウ、キチョウ、シロミスジ、リュウキュウミスジ、イシガケチョウ、アカタテハ、ヒメアカタテハ、アマミウラナミシジミ、ルリウラナミシジミ、クロマダラソテツシジミ、ヤマトシジミ、シルビアシジミ、クロセセリ、クロボシセセリを見ているのだから、種類としては一応かなりそろっているようだ。こう書くと、なんだ、結構いるじゃないか、と感じるが、見たのはどの種類も1つか2つ。とにかく数が少ない。そしてまた曇ってしまった今日は洗濯もあるし、これまでにしておこう。
宿に戻って洗濯し、くつろぐ。
 夜は例によってS條邸へ。10時前に辞去。

 19日
 朝からドン曇り。ただでさえ少ない蝶が、これではろくに飛ばないだろう。晴れ間出るまでは宿で過ごそうと、のんびり過ごす。けれど、持ってきた本も残り少なくなってしまったし、面白そうなテレビ番組もない。10時半を過ぎて、とにかく出かけてみることにした。
 けれど、やはり蝶はほとんど飛ばず、1時間で諦めた。昼飯を調達してまた宿でのんびりする。すると、12時半ころになってやっと晴れ間が見えてきた。それならまた出かけてみよう。
 昨日、Y口さんがコモンタイマイを見たという人面岩に行ってみることにする。そこで採れたから、またそこにいる、なんて甘い考えは持ってないが、以前も蝶が少なかった時、人面岩あたりが一番マシだったこともあったのを思い出したのだ。今回も、そのパターンかもしれない。
 しかし、のぼっていくうちにまた曇ってしまった。蝶はリュウキュウヒメジャノメが多いだけで、ほかのものはほとんどいない。ヒメジャは曇っても飛ぶが、ほかの蝶は飛ばない。前回とはちがうようだ。コモンタイマイは採れなくても、ここは依然ヒメヒトツメジャノメを採った縁起のいい場所でもあり、それがまた採れないともかぎらないので、じっくりヒメジャを見ながら探索する。とはいえ、ヒメジャだけはたくさんいるので、全部をネットして確認するのは大変だ。飛んでいるときに白線が見えるものはヒメジャにまちがいないのでパス。以前採ったときはかなり黒く見えたので、明るい色のものもパス。黒くて白線が確認できなかったものだけをネットして確かめる。けれと、どんなに確かめてもみんなヒメジャだった。そう簡単なものではない。
 1時間ほど探索して降りてきたが、曇り空が明るくなることはない。それでも宇良部に上ってみたりしたが、やはり蝶はほとんど飛ばない。2時半には完全に諦めて宿に戻ってしまった。
 気分的にもスッキリしなしし、この日はS條邸もパス。

 20日

 この日も雲が多く、風も強いが、昨日よりはマシ。時折晴れ間も出る。9時半に宿を出る。
 宇良部に行くとY口さんがもう来ていた。コモンタイマイの様子を聞くと、花に来ていたのではなく、産卵に来ていたのではないかという。木にまとわりついていたので採りやすかったそうだ。そうだよな。コモンタイマイは飛ぶのが速くて、たくさんいたときでも、簡単にはネットできなかった。一発で仕留めてしまったのはたいしたものだと思っていたが、そのような状況だったのか。
 Y口さんと別れてナーマ浜へ行く。一昨日、一番数がいたところだ。けれど、今回はそんなに数もいない。
 そこからMFPに行ってみる。このところ、草刈りと除草剤でずっと状態がよくなく、すでにMFP(マイ フェーバリット ポイント)とは言えなくなっているが、行くところがないから試しに覗いてみる。今回は除草剤の影響が薄れてきたようで、少しは復活傾向がみられたが、まだまだポイントと言えるほどの状態ではない。何もしないまま通り抜けようと思ったところで、白い蝶を発見した。ひと月ほど前にこの時期には珍しいタイワンモンシロチョウの記録があり、それかもしれない、と思って近づくと予想以上に速く飛んだ。ムムム、これはモンシロやタイワンモンシロではない。では何だ?タイワンシロチョウの矮小個体か?まさかヤエヤマシロチョウじゃないだろうな。とにかく捕まえなくては、とバイクで追いかける。が、シロチョウの特性でなかなかとまってくれない。ますます怪しい。思い切り前に出て待ち構えていると畑の方に入って行ってしまった。けれど、まだ姿は見えている。戻ってくるのを期待しながらじっと待っていたが、やがてさらに奥へと飛んで行って見えなくなってしまった。もし、ヤエヤマシロだったらすごいチャンスを逃したことになるが、まあ、可能性は低いだろう。後から考えて、一番可能性がありそうなのはモンキチョウの白いメスだろう。今回、モンキチョウは見ていないが、前回来たときには小数だが目撃している。生き残りがいてもおかしくない。
 比川の売店で昼食を仕入れ、宇良部へと向かう。漁業無線のところで、様子を見ながら昼食にしていると、Y口さんがやってきた。特によいものは見てないらしい。2人で蝶談義をしながらあたりを見ていると、メスアカムラサキが飛んできた。久部良岳でも見ているし、今年はメスも採れているので、小発生があったのかもしれない。これはY口さんに譲るが、タコ踊りばかりしている。一旦、鞍部の方を見に行って戻ってくると、なんとか確保できたようだ。テリ張りしている蝶はその場を離れず戻ってくるので、粘れば採れる可能性が高い。私の方はクロマダラソテツシジミの低温期型を一つだけ確保した。なんと、与那国に来て初めての獲物だ。
 しかし、同じところにいても面白ない。Y口さんはアオタテハモドキを求めて東崎へ行くという。私はもう一度人面岩に行ってみることにした。
 けれど、人面岩へと昇っていくと、また曇ってきてしまった。今回は天気にも恵まれない。そして、また1時間かけて端まで往復してみたが、やはり何も見つからない。
 もう一度宇良部へと戻ったが、雲が広がり晴れ間も出そうにない。2時半には諦めて宿に戻ってしまった。
夜はサッカーのキルギス戦があるので、この日もS條邸はパス。サッカーは4:0で快勝。まあ、これは当たり前、むしろ物足りないくらいか。

 21日

 朝から晴れている。なんか、久しぶりにいい天気になった気がする。明日は帰るだけなので、今日は実質最終日だ。最後に何か出会えればいいのだが。
いつものように9時半に宿を出る。この時期、蝶の飛び出しは遅く、晴れのとき9時ころ出て行っても何も飛ばないからだ。
 まずはいつも通り宇良部へと行く。Y口さんはすでに来ていた。今日は風も弱まっているので山頂に行ってみる。
 山頂はススキが生い茂って、あまりよい感じではない。いつもなら必ずシロミスジがテリを張っているのだが、今回は何もいない。それでも何か吹き上げられてくるかもしれないので、しばらく待ってみる。けれど、本当に蝶が少ないのだろう。15分ほど粘ったものの、アサギマダラとヒメアサギマダラ、アマミウラナミシジミと思えるシジミがそれぞれ1つずつ飛んできただけだった。
 諦めて下に降り漁業無線のあたりで、またしばらく待機する。晴れているので、日向にいるとうっすら汗が出てくる。今回、このような状況は初めてだ。今まで、気温が25度ていどまでしか上がらなかったが、今日はやっと25度を超えそうだ。けれど、蝶の数が増えたようには感じない。しばらく待ってみたが飽きてきたので場所を変えることにする。
 比川の売店で昼食を調達してからナーマ浜へと向かう。そこで昼飯を食べながらモンバの木の近くを飛ぶスジカバを眺める。食後、草むらをチェックして、秋型のタテハモドキを1つ確保。これで与那国で採った蝶は2つ目だ。
 
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 そういえば、石垣で聞いた話だが、昆虫館を訪れたある人が〇十万の蝶を見せてくれ、と言ってきたそうだ。そんなものいるわけない。しいて言えば、東京産のギフチョウなど絶滅産地の貴重品ならそんな値がつくかもしれないが、バンナの昆虫館にそんなものはない。どうやら、今回の私のようにちょっとしか採らなかった場合、〇万円の旅費をかけて1つしか持ち帰らなければ、その蝶にかけた費用が1つにつき〇万円になってしまう。つまり、何度も通って、やっと1つ採れた、だから、こいつは〇十万の価値がある、というような話が妙に伝わって、〇十万の蝶がいる、という話になったらしい。いやはや、私もよくそんな冗談を言うが、素人に話すときには気を付けなければならないようだ。
 さて、昼飯も終わり、まだ行ってない桃原方面を覗いてみることにする。それまで北風が強かったので、もろにその風が当たるそちら方面には行ってなかったのだ。だが、今日は風が弱い。どうせだめだろうが、一応確かめておこう。
 桃原から立田神へとバイクで流していくが、やはりたいしたことはない。それまで見なかったヤエヤマムラサキ目撃したくらいだ。ふとスマホを見てみると、Y口さんがナーマ浜に向かうと書いてある。東崎でアオタテハモドキが採れなかったというので、ナーマ浜にはいたよ、と返信しておいたのだ。どうせ行く当てもないし、情報交換もできるから、私もナーマ浜に引き返す。
 そこにはまだY口さんは来てなかったので、そこへ通じる自衛隊基地の方へ向かうと、そこで向こうからやってくるY口さんを発見。その近くにあるナンバンコマツナギを確認してから一緒にナーマ浜に戻る。
 さっき私がいたときにはタテハモもアオタモもわずかながら飛んでいたのだが、今度は全然見当たらない。諦めかけたころ、やっと1つネットできた。かなり黒くて面白い個体だったが、カケがあったためリリース。
 その後、Y口さんは西崎をチェックに行った。私は最後の望みを宇良部で過ごそうとそちらへ向かった。
 いつものように漁業無線のところにバイクを停め、探索を開始する。相変わらず蝶は少ない。たまに飛んでくる大きめの蝶はアサギマダラだ。小さめの黒っぽい蝶はアカタテハだ。たまに、スジカバやアマミが飛ぶが、ネットを構えることもなくブラブラと歩いていた。と、5mほど先にまた蝶を発見。アサギマダラほど大きくないし、アカタテハのように黒くもない。何だろう?ヒメアサギかな?とのんびり構えていたら、またふっと飛んで1m先のセンダングサにとまった。それはなんとコモンタイマイではないか!慌ててかついでいたネットを構え直して振ったのだが、ネットが届く寸前に飛び立ってしまった。痛恨の振り逃がし!コモンタイマイは樹上高く舞い上がってしまった。なんたることだ。初めからネットを構えていれば飛び立つ前に確保できたろうし、吸蜜にきていたのだから、じっとしていれば次の花にとまっただろう。けれど、焦って振ってしまったものだから、驚いて飛び去ってしまったのだ。これはちょっとショックだ。
 気を取り直してY口さんにライン入れると、自分もそこに向かっているとのことだった。テリ張りする蝶ではないので、戻ってくる可能性は低いだろうが、それでも諦めきれないので、最後までそこで待つことにした。
 やがてY口さんがやってきて、2人であたりを見ていたが、1時間半粘ったものの、やはりコモンタイマイは2度と現れなかった。チラとしか見てないが、どうせボロ個体だろう、以前にたくさん採っているから、1種増えるわけでもないだろう、などと自分を納得させようとするが、やはり悔しいものは悔しい。今年最後の採集品がコモンタイマイだったら、締めくくりもバッチリだったはずだ。あー、こう書いているうちにまた悔しくなってきた。
 4時近くなって完全に諦め、宿に戻った。夜になってS條邸を訪れ、振り逃がしを報告。宿に戻ってもんもんとしながら眠りについた。

 22日

 8時15分に宿をチェックアウト。バイクを返して空港に行く。しばらくすると、もう一人の蝶屋もやってきた。今まで、何度か見かけて、少し話もしたが、この人も同じ便で帰るそうだ。そして、なんとこの人も昨日コモンタイマイを採ったと言う。なんてこった。採れなかったのは私だけか。ここで初めて自己紹介となった。神戸のH本さんという人で、与那国は初めてだったそうだ。初めての与那国がこんな悲惨な状況だったのは気の毒だが、そんな中でもコモンタイマイを採ってしまうのだから只者ではない。
 一緒の便で石垣へ飛び、そこで乗り換えて我々は東京へ、H本さんは大阪へ帰る。我々の飛行機は定刻10時50分、H本さんは12時ころだと言う。我々の方が先に帰ることになる。はずだった…
 我々の便の搭乗案内が始まったが、なぜか、事前改札のあと、後続のアナウンスがない。発車時刻をとっくに超えているのにどうなっているのかと思っていたら、なにか故障が見つかったそうだ。事前改札で中に入っていた人も戻ってきてしまった。そして、ついには機長まで下りてきて説明があった。故障が見つかり修理しようとしたができず、部品を那覇から取り寄せるために出発は早くても3時半になると言う。なんだい、これでは帰りは深夜になってしまうかもしれない。昼食券をもらって、1度外に出る。昼飯は買ってあるので、昼食券はお土産に使う。
その後、帰りがそんなに遅くなるのなら、もう1泊増やしてしまおうか、たぶん、宿泊代や食費、交通費も全部負担してくれるだろうから、いいホテルに泊まって、いいもの食って明日の便に帰ればいいのでは?なんて話ながら変更手続きの列に並んでいると、いきなり放送が入って、12時55分に飛ぶと言ってきた。え?3時半を過ぎるんじゃなかったの?もう切り替えちゃった人や、街に戻ってしまった人はどうなるんだろう?なんて考えながらも、また搭乗口に戻った。
 出発はさらに遅れたものの、飛行機は無事に飛んで無事に羽田まで帰ることができた。さすがに帰りはラッシュに引っかかってしまったが、それでも夕飯前には自宅に帰ることができた。まあ、こんなこともあるか。朝、与那国を出て、夕方東京に帰れるのだから、よしとしなければ。50年前なら3日はかかったろうし、100年前なら3か月くらいかかったはずなのだから、文明の進歩に感謝しておこう。
 さて、今年の採集もすべて終わった。次は来年、たぶん2月末から八重山に行くことになる。今年はあまりよいものも採れず、終わりもしまりのないものだったが、来年はいい年になってもらいたいものだ。

この記事へのコメント

cherubim88
2018年12月17日 16:59
今年も楽しく読ませていただきました。
1年間、ありがとうございました。
そしてお疲れ様でした。
これからしばらくの間、先生の採集記を拝読できないと思うと、ちょっと寂しいですが、来年の更なるご活躍を期待して待っております。

来年、特大ホームランを見たいなあ・・・
(*^_^*)
シオシオ
2018年12月17日 17:32
cherubim88さん コメントありがとうございます。

そして、勝手気ままなブログをずっと読んでいただき、こちらこそありがとうございます。
来年は、各種低温期型を狙って、3月頭からの八重山がスタートになりそうです。
特大ホームラン、打ってみたいなあ。マダラシロやヒメヒトツメとは言わないまでも、イワサキコノハやガランピマダラなどの、まだ採ったことのない迷蝶が採れることを願っています。
来年も応援よろしくお願いします。

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